個人事業主のための損害賠償基礎知識

損害賠償の基礎知識として過失という要件を知っておこう

過失という一定の要件

過失という一定の要件 IT化によって急速に変貌するグローバルな現代社会において、自らのビジネスに関連する法律知識を持ち、個々の契約内容を明確に理解して、お互いの権利義務を適切に行使するということは、ますます重要になっています。契約社会である欧米も含めて世界に展開するITビジネスでは、ともすれば全くあずかり知らぬところから、損害賠償で訴えられるということがあり得る世の中なのです。

損害賠償とは

訴訟社会といわれるアメリカにおいて、高額な損害賠償の請求が話題になることがありますが、一般的に損害賠償を請求されるというのは、契約違反による場合か、あるいは不法行為責任を問われる場合です。つまり損害賠償とは、本来果たすべき義務を果たさない場合、あるいは当然に一定の義務を負うべき場合においてその義務を果たすことが求められる場合に、原則として金銭によって購うことを求められる代償といえます。
例えば仕事の完成を請負いながら、仕事を納期までに完成させられなかった場合や、完成させたけれどもその仕事に不備があった場合などといった例が挙げられます。ただし地震で設備が壊れるなどの、いわゆる不可抗力による場合は除かれます。もっとも実際に損害賠償を請求できるかどうかの判断には、法律の規定等に従って、類型ごとに条件が異なる場合もあるため、注意が必要です。またわざと、あるいは不注意によって何らかの損害が発生した場合にも、その損害を賠償する責任を問われることになります。

損害賠償の範囲

ここで欧米であれば、懲罰的な損害賠償が認められているため、現実にこうむった損害の他に、罰として高額の賠償金を請求することができる場合がありますが、日本の法律では認められていません。そのため日本では飽くまで実際に生じた損害に対する賠償が基本であり、それに加えて一定の場合には、精神的なダメージに対する慰謝料などが認められる場合もあります。
しかしいずれにせよ賠償を認められる損害とは、「行為」に対する「結果」として発生したものである必要があり、この両者の間に「相当因果関係」が認められる範囲に限定されます。というのも「風が吹けば、桶屋が儲かる」式の考え方を都合の良いように遡ってしまうと、とんでもない原因を引っ張り出すことになりかねず、それでは安心して取引をしたり、社会生活を送ることすらできなくなってしまうからです。
このような法律の運用は、現実社会の人々の営みを抜きにして語ることはできないのであり、従って法律の一つ一つの文言が適切に解釈されることによって運用されており、長年の間に数多くの判例が積み重なって、一つの方向性や一定の目安を示しているものなのです。

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